Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

     “スタイルはいろいろ
 



いやに駆け足な秋の深まりに追われていても、
時間の流れはそうそう変則的にはならなくて。
よほどに融通が利くものでもない限り、行事や催しの日程はさほど動くこともなく。
大学アメフトの関東秋季大会も、
九月初めの開催から数えればそろそろ折り返しという頃合い。
今のところは負けなしの絶好調という“フリルド・リザード”だが、
こちらが好調なことが悪目立ちするものか、
同じリーグ内のライバルチームに勝手を知られても来ており。
自軍のゲームと試合時間が重なっていても、
わざわざ主務や部員が偵察(スカウティング)にと
スタンドまでやって来てデータを取っていったりするほどで。

 「陣形とか定型的なもんはともかく、
  妙な動きをした奴とかコンディションの良しあしとか、
  直前のゲームで拾ったものが
  結構 参考になったりするしな。」

いくら夏の間にきっちり鍛えていて、調整も万全に済ませていても、
そんな開幕時のコンディションをずっと保てるものでもない。
だって、誰もが人間だもの。(こらこら)

 「人間離れしてる顔ぶれもいなくはないが。」
 「だよなぁ。」

何で格闘技に行かねぇんだって思うような奴とかな、
そうそう、陸上部に行けばすぐにも日本新出せるような奴とかな、と。
そんなのこの道を選んだ個々人の勝手でしょと思うよな言いよう、
まるでファンの側のような調子で口にしたかと思えば、

 「あ、そこで止めて。」

参考資料の動画映像、
気になったところがあったか、幼い声が堂にいった調子で指示を出し、

 「なぁんでこいつ、ボール持つとこんな大回りすっかな。」

細い眉をぎゅぎゅうとしかめた、
まだ小学生とは思えぬほどの忌々しげなお顔が浮かぶほど、
苦々しい声でそうと指摘されたのは、
彼らの仲間内のランニングバッカ―さんであり。

 「こいつのクセみてぇなもんでな。
  走りに集中しろと再三言ってんだが、
  どういうケースでも大きくコースが膨らみやがる。」

付き合いが長いせいでか、
葉柱のお兄さんの声にも意外な指摘だという響きはなく。
むしろ“ああ指摘されおったか”と、
反省点ではあるものの、一向に改善されねくてよという淡々としたもので。

 「そんな言ってていいのかよ。
  今シーズンはこいつも作戦の主軸にしてんのによ。」

昨シーズンまでは上級生とポジションがかぶっており、
スタミナ切れになったらばと投入されていたクチなれど。
今年からはフル出場の機会も増えたとあって、
練習では気づかなかった癖も目に付くようになったというところ。
小さな鬼軍曹殿に置かれましては、
シーズンがここまで進んでから気づいたのも癪なのか、

 「こんな無駄な走りじゃ、あっという間に見越されて進路絶たれるぞ。」

このごろじゃあ、守備専任の前衛も足の速い奴多いんだから、
癖だからじゃすまねって言ってんだ、と。
どっかの厳格な父のように、
譲れねぇからなという含み込みで言い放つ妖一くんなのへ、

 「ああ、そう伝えとく。」

その方が効率もいいのだ、いちいち逆らうことでなしと、
そこは総長さんもすんなり飲んだ。
そのままモニターチェックは続けられ、

 此処で頭数足りねぇのはなんでだ?
 駆けつけるのが間に合わなんだらしくてな
 だからって、あぁんな遠くから銀さんが駆けつけようとしてんのはねぇだろう

フォーメーションがグダグダじゃねぇかと、
当日珍しくも駆けつけられなかったせいもあり、
俺がいたなら見落とさなんだのにぃと、
またもや腹立たし気なお声になる坊ちゃんだったが、

 “そんな怒ってるように見えないのはなんでだろう。”

トレーニングのインターバルとあって、
他の面子も三々五々、思い思いの場所で一息ついてた時間帯。
ベンチに腰掛け、ノートPCの液晶画面で動画を観ていた首脳二人だったのだが、
PC周りにポッキーだのポテチだの、今日の差し入れのおやつを広げ、
それらを摘まみつつの、
ちょっとした試写会もどきの様相だったからかもしれず。

 「だあ、何してっかな、52番。」

文句たれたれな金髪坊やだが、
ベンチの上でおっかない主将様を背もたれ代わり、
小さな背中を預ける格好で座っており。
お怒りの気持ちとやらいうものも、
摘まんだポッキーを指揮棒のように振り回して示していたりするものだから、

 “何か寛いでないか。”
 “ちょっとしたビデオ鑑賞の会みたいだよな。”

お、イケイケそのまま突っ込め、だぁあ、潰されてんじゃねぇよ、と。
一喜一憂する小さな手がチョコ菓子を振り回し、
そんな坊やがエキサイトするさまを。
椅子代わりにと伸ばしたお膝に乗っけ、
怒りもしないで、むしろのんびり眺めておいでの

 「…どうしよう。
  俺、ルイさんがちょっとアットホームなパパに見えるぞ。」

アメフトボウラーというだけじゃあない、
バイク乗りとしても
恐持てで知られる葉柱ルイを掴まえて、
そんな微笑ましい気持ちを抱くなんてと。
感覚がおかしいのかなと不安そうな声になるお仲間なのへ、

 「心配すんな、俺もだよ。」
 「ルイさんだって父性くらい持ってようさ。」

通りすがりの別口のメンバーらが、
やれやれと肩をすくめるわ、案じるなとはげますわ。

 やはりやはり、
 いろんな意味から奇抜なチームには違いない
 フリルド・リザードなようでございます。




     〜Fine〜  15.10.20


 *ハロウィンも間近ですが、
  それが済んだら“ポッキー&プリッツ”の日だなぁと思いまして。
  パジャマパーティーとか、DVD鑑賞会には
  ポテチとポッキーって付きものですよねvv
  …と言ったら、ぼんち揚げも忘れてくれるなとくるのが関西です。(笑)

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